僕と左手と 2022.05.30 物語 僕の左手がかえってきた。散々殺菌された手はひどく他人行儀に振る舞っていた。アイデンティティを漂白され限りなく物に近い何かになっているように思えた。そのせいで逆に僕の体の一部としては異質の存在となった。高校を卒業し、僕は地元の大学へ、未羽は東京の大学へとそれぞれ進学した。寂しがり屋の彼女は東京